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東京地方裁判所 昭和27年(行モ)10号 決定 1952年6月09日

申請人

康安道

被申請人

東京都知事

主文

本件申立を棄却する。

事実

申請代理人は、

「申請人は打球(パチンコ)業を営むものであるが、東京都葛飾税務事務所長は申請人に対し別紙目録第一記載の如く入場税の納付を命じて来たので、申請人は被申請人に対して右処分を不服として異議申立をなした処、被申請人は別紙目録第二記載の如く右異議申立を理由なきものとしてこれを棄却する決定をなした。然し乍ら打球業は入場税の対象となり得ないものであるから、右葛飾税務事務所長の処分及び被申請人の決定は何れも違法である。よつて申請人は東京地方裁判所に対し右処分及び決定の取消を訴求して居るのであるが被申請人は別紙目録第三記載の如く申請人所有の営業用物件を差押へ、葛飾税務事務所長は不日これを公売に附せんとして居る。然し右営業用物件は申請人の営業上欠くべからざるものであるから被申請人のなした右差押処分は、地方税法第百二条第一項により本件にもその適用を見る国税徴収法第十六条第一項第四号に違反するものであり、又右差押物件が公売せられるに於ては打球器は打球場より除去せられることとなり、申請人の営業は全く不可能となるのであるが、打球業は流行性を帯びて居るものであつてその流行期に営業不可能となる時はそのよつて生ずる損害は単なる金銭賠償を以ては償ひ得ざるものと言はねばならぬ。よつて行政事件訴訟特例法第十条により、右物件の公売処分執行の停止を命ぜんことを求める。」旨申立てた。

理由

申請人主張の葛飾税務事務所長の処分及び被申請人の決定の当否は暫く措き、申請人主張の別紙目録第二記載の物件は代替性を有するものであつて、その公売によつて申請人は非代替的なものを失ふ訳ではなく、又打球業が流行性を帯び現在がその流行期であるとしても、その流行期に於ける営業不可能と言うことによつて生ずる損害は、得べかりし経済的利益の喪失と言うことであつて、それ自体金銭の問題であつて、金銭賠償によつて充分償い得るものである。従つて申請人は右公売処分によつて償うことのできない損害を蒙るものとは認められない。よつて本件公売処分執行停止命令申請は此の点においてすでに理由なきものであるからこれを棄却する。

(裁判官 毛利富次郎 北村良一 山田尚)

(別紙目録省略)

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